先日、神奈川県の東扇島で、気持ちのいいにーちゃんに会いました。
その日はカニ星人とヒトデ星人(赤)の猛攻にあい、チョイ投げ&ヘチ(で底ねらい)は絶望的な雰囲気でした。
私がイソメを2パックほど献上した頃、隣で竿を出していたにーちゃんが、突然ブチ切れました。どうも、イソメを献上してもいっこうに友好的にならないカニ星人に切れたようです。
にーちゃんは、神業のような速さでサーフキャスト用の道具を組み立て、雄叫び一番キャスティングを行いました。
「どぅおぅりゃぁぁぁぁ!」
ギリシャで彫刻にされちゃいそうな、美しいフォームでした。
熟練のシロギス星人ハンターのような体の運び、若き戦士のような力強いキャスティング、私が観た中でも最高級のキャスターです。
しかし、私は断腸の思いで彼にこう忠告せざるをえませんでした。
「そんな沖に根はないよ」
「いいんです。カニはいません」
「でも、魚も釣れないよ」
「いいんです。ヒトデはいません」
「でも…」
「いいんです。餌はなくなりません」
彼の瞳は、虚空の一点を見据えたまま動きません。
私は、これからの釣りを担っていく若者たちに、ちょこっと不安を覚えながら帰途につきました。
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